組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案の衆議院通過を受けて

Ⅰ はじめに 

 テロ等準備罪(テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画罪)を創設する組織犯罪処罰法改正案(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案、193回国会閣法64号)が衆議院を通過しました。このエントリは、これを受けて、衆議院の議論で積み残されたと思われること(=参議院で議論されるべきこと)を、刑事法研究者としての視点から整理しようとするものです。

 なお、同法案は国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(英文名称は、United Nations Convention against Transnational Organized Crime。以下、「TOC条約」と記す)を受けて国内法の整備のためとして上程されているものですが、同条約の解釈には限定的にしか言及しません。このことは、私が国際法・国際刑事法・国際政治学等の専門家ではないためであり、TOC条約との関係が問題とならないことを意味しません。

 なお、私は現在在外研究中のため、日本国内での報道をフォローしきれておりません。この点はご海容頂ければと思います。

 

Ⅱ TOC条約と政府案

 

一 TOC条約

 ここでは前述の理由から、条約解釈そのものは行いません(TOC条約の解釈については、たとえば、伊東研祐教授・古谷修一教授による各論稿*1のほか、近時のものとして、髙山佳奈子教授による一連の論稿・発言を参照されるとよいと思います)。

  とはいえ、まずは、私が有している疑問を述べるに必要な限りで、TOC条約の文言を振り返っておきましょう。

 テロ等準備罪(あるいは旧法案における共謀罪)を創設しようとする議論のきっかけとなったのは、TOC条約5条の以下のような規定です(外務省訳)。

第5条 組織的な犯罪集団への参加の犯罪化

1項 締約国は、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。

 (a) 次の一方又は双方の行為(犯罪行為の未遂又は既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とする。)

  (i) 金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを1又は2以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の2人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの

  (ii) 組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為

   a 組織的な犯罪集団の犯罪活動

   b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)

 (b) 組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること。

2項 1項に規定する認識、故意、目的又は合意は、客観的な事実の状況により推認することができる。

3項 〔略〕

  すなわち、同条約5条1項(a)は、重大な犯罪*2につき一定の合意をすること(5条1項(a)(i))、一定の組織に参加すること(同(ii))のいずれかもしくは双方を犯罪化するよう求めるているのです。

 日本は(i)のオプションを採用し、かつての法案における共謀罪あるいは今般の法案におけるテロ等準備罪を創設することで、国内法を整備しようとしています。

 

二 条約の解釈を巡る争い

 かつて、政府は、この条約の文言を文字通りに読んで、TOC条約が要求する義務を果たすためには、同条約5条1項(a)(i)が認めるもの(「国内法上求められるときは、その合意の参加者の2人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの」)以外の限定を付すことはできないとしていました。

 すなわち、政府の説明によれば、条約は次のようなことを要求しているとされていたのです(前述のように5条1項(a)で(i)のオプションを採用した場合)。

  1. 一定の目的で行う重大犯罪に関する複数名での合意を犯罪としなければならない。
  2. その際、単に合意しただけでなく、「合意の内容を推進するための行為」が行われたことを要求することは許される。
  3. 「組織的な犯罪集団が関与するもの」に限定することは許される。
  4. これ以外の限定を加えた場合は、条約上の義務を果たしたことにならない。

 このような政府による条約の解釈に対しては、有力な異論もありました。反対説は、同条約34条1項や立法ガイドを手がかりに「そのように形式的に読むべきではない」と主張したのです。大ざっぱにまとめてしまえば、それらの見解は、「新たな立法を行わなくとも、上記1の義務は実質的にはすでに履行されており、現状で条約を批准できる」とするもの、あるいは、「上記4に反対し、同2、3以外の限定を加えることも条約上許される」とするものでした。

 いずれの解釈に私が賛成するかは割愛しますが*3、ここでは、このように条約解釈を巡る対立があったことを確認しておきます。

 

三 今般の政府案

 さて、上記の対立を確認した上で、今般の政府案についてです。今般の政府案は、「(テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)」との小見出しのもと*4、以下のような規定を設けることとしています(以下は、提出時法案による)。

第6条の2 

 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第3に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を2人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。   

 一 別表第4に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの  5年以下の懲役又は禁錮

 二 別表第4に掲げる罪のうち、長期4年以上10年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの  2年以下の懲役又は禁錮  

2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を2人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。

 別表は長いので省略しますが、この法案のうち特に議論が集中している6条の2第1項は、次のような作りです(自首減軽の部分を除く)。

  1. 「次の各号に掲げる罪」(=「別表第4」に掲げられた罪)を、
  2. 「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第3に掲げる罪を実行することにあるもの……)の団体の活動として」、
  3. 「当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を2人以上で計画」し、
  4. 「その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき……計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたとき」に、処罰する。

 政府案の狙うところを整理するならば(すなわち、その「狙い」が実現されているかはいったん措けば)、単なる「一定の目的で行う重大犯罪に関する複数名での合意」ではなく、以下のような限定を加え、処罰範囲を絞り込もうとしている、ということになります。

  1. 対象犯罪を限定する。
  2. 主体を限定する。
  3. 「合意」では「計画」したことを処罰の対象とする。
  4. 準備行為を要求する。

 このうち、2、4は、(かつて政府が行ったように)TOC条約を形式的に解釈しても、条約上許されるでしょう(2は同条約5条1項(a)(i)後段がいう「組織的な犯罪集団が関与するもの」に、4は同前段がいう「当該合意内容の推進のための行為を伴う」に該当するため*5)。

 3はどうでしょうか。3の限定を付すことについて条約が明文で認めているわけではありませんが、(4について見たように)条約は「当該合意内容の推進のための行為を伴う」という要件を付加してよいとしていますから、「合意」の段階ではなく「計画」の段階ではじめて処罰できるとすることも許容するでしょうし、この解釈は5条1項(a)(i)の読み方としても「素直」と言えるでしょう。そうだとすると、3の要件を付加することとかつての政府のように条約を形式的に解釈することとは、(一定の実質的解釈を導入してはいるものの)矛盾するとまでは言えなそうです。

 1はどうでしょうか。対象犯罪を「組織的な犯罪集団によって行われることが現実的に想定されるものに限定した」と政府は説明している、というのが私の認識です*6

 しかし、(対象犯罪を限定する方向性それ自体の是非は別にして、)条約のどこに、このように対象犯罪を限定してよいと書いてあるのでしょうか。政府は形式的な条約解釈を撤回したのでしょうか。もし撤回したのであれば、なぜ、従来から言われてきたような、TOC条約による義務を履行するために新たな立法は不要とする見解や、より限定的な要件を付すべきだとする見解が否定されるのでしょうか。民進党の対案は条約上の義務との関係でどう評価されることとなるのでしょうか。もし条約が形式的に解釈されるべきだとの立場が維持されているのであれば、今般の法案を成立させても、条約上の義務を果たしたことにならないのではないでしょうか。

 どうも政府の条約解釈は密かにじわじわと変容しているようです。

 条約の解釈を変更することそれ自体は許されると考えますが(この件で「解釈を変えるな!」とデモをする人はいないでしょう)、同時に、従来の解釈が誤りだったのであれば誤りは誤りとして政府の責任において明確に正し、新たな理解に基づいた誠実な説明をすべきです。参議院においては、条約の読み方について、政府に正直で精密な説明が求められるのだろうと思います。

 

Ⅲ 処罰の早期化

 次に、刑事法研究者として、議論が不足していると考える点をさしあたり2点指摘しておきたいと思います。なお、以下は、かなり駆け足の議論になりますので、詳細は、拙稿「共謀罪あるいは『テロ等組織犯罪準備罪』について」慶應法学37号(2017年)151頁以下を参照して頂ければ幸甚です。

 

一 「テロ対策」としての有効性

 テロ等準備罪がテロ対策に有効であるとする議論があります。

 この議論に対しては、そもそもTOC条約が(マフィア等の)組織犯罪対策であってテロ対策のためのものではないとする反論も存しますが、ここではTOC条約の趣旨に関する議論から離れ、そもそも実体法の整備がテロ対策としてどの程度意味があるか、ということを考えてみましょう。

 さて、前掲拙稿には以下のようなことを書きました(162頁以下)。 

 共謀罪等は、実行の着手より早い段階を処罰するものであるから、米国におけるコンスピラシーと同様、処罰を早期化する……機能を有する。

 もっとも、米国では、現実にコンスピラシーが訴追されるのは、コンスピラターによって、なんらかの実質的ステップがなされた時点であるとされる。通常は、このステップがあって初めて、当該グループの存在に訴追者が気付き、刑事手続が開始されるのである。このため、コンスピラシー概念が実際に米国において担っている役割は、わが国における共謀共同正犯概念のそれと極めて近いと思われる。

 このような米国の経験を参考にする限り、重大な犯罪に早期に介入するという共謀罪等の機能は限定的なものになると予想される。このため、共謀罪等がテロの未然防止に役立つとする賛成論も、共謀罪等が過度な早期介入を招くとする反対論も、やや現実性を欠く。

 

 予備罪処罰の実態も、共謀罪等が早期介入に役立つか否かを推測する際に、一定程度有意義であろう。

 警察庁の統計によれば、2014年には、31件の殺人予備罪が認知され、同罪で33件29人が検挙されている。このことは、早期介入の成功を意味するのであろうか。

 そこで、試みに朝日新聞本紙全文記事データベース(「聞蔵Ⅱビジュアル」)により、「殺人予備」というキーワードに言及した同年の新聞記事(朝日新聞または朝日新聞デジタルに掲載されたもの)を検索したところ、11件の記事がヒットした。

 このうち3件はオウム真理教による一連の事件に関し長期間逃亡した後に逮捕・起訴された被告人らにかかるものであり、また、3件は、焼死した被害者の母親が殺人罪については不起訴処分とされ殺人予備罪で起訴された事件にかかるものである。さらに、2件はスナック店員を刺殺した被疑者が(スナック店員とは別人である)元妻も殺害するつもりであったと供述し元妻に対する殺人予備罪で検挙された事件にかかるもの、2件は折りたたみ式ナイフの刃渡りの計測を間違え銃刀法違反容疑で誤って逮捕された者が、父親を殺害するためにナイフを持っていたとして改めて殺人予備罪で逮捕(後に不起訴処分)された事件にかかるものである。

 このように、2014年に報道された事件について見る限り、殺人予備罪で検挙し得たのは、行為者自身や共犯者によると思われるなんらかの犯罪がなされた後なのである。

 断片的な報道から一足飛びに結論を導くことは控えなければならないが、それでも、これらの記事からは、殺人の予備行為を行ったのみの時点で検挙することは難しいという「実態」が浮かび上がってくる。そして、このことは、さらに早期の段階である共謀罪等処罰の困難さを示唆するものであろう。

  拙稿では、便宜上、米国におけるものを「コンスピラシー」、かつて日本で創設されようとしていたものを「共謀罪」、共謀罪および今般の法案におけるテロ等準備罪を一括して「共謀罪等」と呼んでいます(同稿執筆時点では、今般の法案は未だ上程されておらず、その内容や法文上付される罪名も不明であったため)。

 なお、引用部分で触れている「警察庁の統計」は、警察庁『平成26年の犯罪』(2016年)1頁を指しています。テロ対策としての有効性を考える際に殺人予備罪を持ち出すことの是非には異論もあろうかと思いますが、同書が殺人予備罪以外の予備罪については個別に項目を立てずそれぞれの罪の既遂・未遂と一括して集計していることから、同罪を取り上げました。

 

二 「不均衡」を超克できるか

 刑法(特別法も含めた広い意味での刑法)は、犯罪が既遂に至った時点で初めて処罰することを原則とし、未遂や予備といった、既遂に至らない時点での処罰は例外としています。

 このため、 多くの犯罪類型は、未遂を処罰する規定(殺人の203条に相当する規定)や予備を処罰する規定(殺人の201条に相当する規定)を有していません(言うまでもないことですが、これらの規定が欠けている多くの犯罪類型では、未遂や予備は処罰されません)。

 ところが、テロ等準備罪が成立すれば、未遂処罰規定や予備処罰規定を欠くにもかかわらず、それ以前の段階である「計画」を処罰することとなる犯罪類型が生じます(3月1日時点の報道に基づいてではありますが、同罪の対象となる罪のうち刑法典上のものにつき、未遂・予備処罰規定の有無を整理した表はこちら)。これらの犯罪類型では、未遂は処罰されないのに、あるいは、予備は処罰されないのに、それより時間的に前の段階である「計画」が処罰されることとなります。

 このように、テロ等準備罪は「どの時点から処罰するか」ということにつき、「不均衡」を生ぜしめるものです。

 この「不均衡」はどのように評価されるべきでしょうか。拙稿には次のように書きました(169頁)。

 

 もちろん、「不均衡」であることが直ちに問題だというわけではない。問題は、このような「不均衡」を超克する論理が存するか否か、である。

 米国法に倣えば、超克の一つの可能性は、「犯罪目的でのグループの存在は、直接予見される犯罪と、そうでない犯罪の双方に対する継続的な活動の中心を提供する」というテーゼを認めることにある。

 もっとも、この危険性を理由として最長で5年以下の懲役・禁錮といった重い刑罰を科すことを正当化するためには、当該グループの存在が有する危険性が一定以上高度であることや、目的とされる犯罪が一定以上重大なものであることが要求されよう。

 また、この危険性が処罰を基礎付ける程度のものとなったと評価し得るのは、一般に当該グループが現実に活動を開始した時点であって、当該グループを結成しようと合意した時点でそのような危険性が認められるのは例外的であろう。

 もし、このように考えるのであれば、合意そのものを犯罪化するためには、合意の時点で処罰に値する危険が例外的に認められるか否かが、立法に際し個別に審査されなければならない。この個別審査を経ずに一律にグループ結成の合意を犯罪化することは、立法の方法として乱暴であることは否定できないのである。

  私見は、この「不均衡」が直ちに許されないわけではないが、この「不均衡」を超克するためには合理的な理由が必要だ、というものであり、また、ある犯罪を行おうとする集団の存在が(個人が同じ犯罪を行おうとする場合と比べて)早い時点での介入を正当化するほど危険だといえる場合に「合理的な理由」があると評価できる、というものです。

 このような私見によれば、テロ等準備罪の国会審議に際しては、対象となる犯罪に関する組織の存在がこのような「合理的な理由」要件を充たすものであるか否か、個別に審査されなければなりません。

 しかし、瞥見の限りでは、衆議院の審議では「キノコ狩り」云々の議論はあっても、個々の対象犯罪を逐一精査する議論はなかったように思います。参議院の審議では、対象犯罪の選別が、ここで指摘した観点から(も)、精密に行われることを期待します。

 

Ⅳ まとめにかえて

 このエントリは「一筆書き」で書いたものですので、議論すべきものを網羅的に書き尽くすという性質のものではありません。この点を留意して頂ければ幸いです。

 在外研究中に911後のFBIによるテロ対策に関する諸文献を読んでいると、そこには実体法に関する議論がほとんどないことに気付かされます。

 実体法の議論がほぼない理由を、「米国には既に広範な処罰範囲を有するコンスピラシーが存するからだ」と考える余地もあります。

 しかし、米国でもコンスピラシーはしばしば犯罪が実行に移されてから発覚していること(前述。したがって、日本の共謀共同正犯と、その機能において大差ない)からすれば、むしろ、「テロ対策にはテロ対策のための情報を収集・分析・利用する手法と組織こそが必要だからだ」と考える方が正しいのでしょう。

 このため、テロ等準備罪がテロ対策になるという説明は、上手く腹に落ちません。「テロ等準備罪により国内法を手当てして条約を批准することにより情報がもらえるからテロ対策になる」なら言いたいことは理解はできますが(そして話は、どうしたら条約を批准できるかという条約解釈に戻るわけですが)、そうであるのなら、正直な説明をして欲しいと思われてなりません。

 また、テロ対策の「本命」が情報収集の手法と組織にあるとすれば、これを法律によって適切に統制するための仕組みが重要です(911後に適切な統制を欠いたまま米国の関係機関が暴走したのは、米国議会による報告書も認めるところです)。日本においてもいずれこの問題に正面から取り組むことが避けられないでしょうから、専門家の端くれとしては、安全と市民的自由の関係につきより思索を深めなければならないと強く感じています。

 

  *  *  *

 

 米国のコンスピラシーの概念等を紹介しかつての共謀罪創設法案を検討したものとして、拙著『刑事立法と刑事法学』(2010年、弘文堂)があります(第5章が該当箇所)。前掲・拙稿のほか、こちらもご参照頂けますと幸いです。 

刑事立法と刑事法学

刑事立法と刑事法学

 

 

*1:伊東研祐「国際組織犯罪と共謀罪」ジュリスト1321号(2006年)73頁以下、古谷修一「国際組織犯罪防止条約の特質と国内実施における問題」早稲田大学社会安全政策研究所紀要1巻(2009年)225頁以下参照。

*2:同条約2条(b)は、「重大な犯罪」とは、「長期4年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為」であるとしています。

*3:かつて、刑法学会のワークショップで、出来の悪い条約は無視すればよい(大意)と口走って共謀罪に賛成する方、反対する方双方から怒られたことのみ告白しておきます。

*4:ちなみにこれは法文に正式に付されることとなる小見出しなので、同罪の名称は「テロリズム……の計画罪」あるいはその略称である「テロ等準備罪」とするのが正しいのでしょう。

*5:ただし、4については、アメリカ合衆国におけるコンスピラシーの要件としてのオーヴァート・アクト(顕示行為)と同法案の「準備行為」が本当に同じなのか(前者の方がよりゆるやかな概念なのではないか、また、条約が認める「当該合意の内容の推進のための行為」とはいかなるものか)という点を詰めて考える必要があります。

*6:法務大臣があれこれ言うので、実際のところ、限定の趣旨・基準に関する政府の説明がどのようなものか、今ひとつよく分からないのではありますが。