あまり正月感のないコロンビア大学ロースクールも、12月30日から1月2日までは図書館閉鎖。このため、今日(12月29日)で一応の仕事納めです。
本年は、以下の業績が公刊されました。
○浅田和茂=井田良編『新基本法コンメンタール・刑法〔第2版〕』(2017年9月、日本評論社)〔薮中悠と共著〕
新基本法コンメンタール刑法[第2版] (新基本法コンメンタール(別冊法学セミナー))
- 作者: 浅田和茂,井田良
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2017/09/25
- メディア: ムック
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・第1編「第1章(通則)」の一部(「第4条の2(条約による国外犯)」・「第5条(外国判決の効力)」・「第6条(刑の変更)」)、および、第2編「第3章(外患に関する罪)」、「第4章(国交に関する罪)」を執筆。
・初版から議論が動いたところはあまりないのですが、そのことを確認した上で、一部の法改正等に対応しました。
○「組織犯罪処罰法6条の2第1項の罪にかかる限定解釈の試み」法律時報1115号(2017年8月)91-96頁
・テロ等準備罪創設直後に限定解釈の試みとして公刊しました。
・立法の過程で解釈の細部に関する議論が――少なくとも米国から観察する限り――ほとんどなかったことに不満と不安を覚えて書いたものです。
・「時の法令」に掲載された立案担当者による解説と大きな齟齬がなく、いろいろな意味でほっとしています(影響を与えられていればよいな、と図々しく妄想したりしつつ)。
○「夜遊びの『適正化』と平成27年風営法改正」谷口功一=スナック研究会編『日本の夜の公共圏――スナック研究序説』(2017年6月、白水社)73-92頁
・学術書としてはとても大きな反響を頂いた「スナ研本」の一部を書かせて頂きました。
・本稿で主として取り上げたクラブや本書が対象とするスナック等のさまざまな夜遊びを、いたずらに禁圧するのではなく「いい加減に」適正化できる世の中だとよいと思っています。
・隣接諸分野をリードする方々とご一緒できたことはとても大きな喜びで、大げさでなく、研究者になって良かったと思いました。この方々がいずれも鮮やかな手つきで素材を料理する様をシェフズ・テーブルで見られたのも素敵な経験でした。
○「訴訟条件と訴因――親告罪の告訴(東京地判S58-9-30判時1091-159)」刑事訴訟法判例百選(第10版)(2017年5月)110-111頁
・昨年、バークレーで資料不足に悩まされながら(出国前の準備が不足していたため。自分が悪い)書いていたもの。
・書きながら新たに勉強することも多く、しんどいながらも楽しい作業でした。
○「米国銃事情管見」信州大学経法論集1号(2017年3月)1-35頁
・ご縁があって、信州大学経法学部の紀要第1号に掲載して頂きました。
・米国に滞在しているとしばしば銃による犯罪や銃規制に関する報道に触れるため、銃犯罪の現状を整理したものです。
・銃犯罪が少ない日本にとって、直接得られる知見は幸いにも(!)少ないのですが、統計等様々な資料を引用しましたので、他のテーマについての調べ物の手がかりになるかもしれません。
・依頼されたテーマではなく書くのは実に久しぶりで、初心に返った気がしました。
○「共謀罪あるいは『テロ等組織犯罪準備罪』について」慶應法学37号(2017年2月)151-171頁
・執筆時期は2016年中。このため、2017年に組織犯罪処罰法改正がここまで大きく社会的な話題となるとまでは思っていませんでした。
・もっとも、法案の提出はあり得る状況下で、噛み合わない議論が繰り返されることを避けるため、議論の前提を整理したつもりではありました。
・その試みの成否たるや……。
○田島正広監修編集代表・足木良太=上沼紫野=梅田康宏=大倉健嗣=長田敦=亀井源太郎=柴山将一=鈴木優=中島麻里=平林健吾編著『インターネット新時代の法律実務Q&A〔第3版〕』(2017年2月、日本加除出版)
- 作者: 田島正広,足木良太,上沼紫野,梅田康宏,大倉健嗣,長田敦,亀井源太郎,柴山将一,鈴木優,中島麻里,平林健吾,阿部豊隆,安藤尚徳,和泉玲子,磯井美葉,上田大輔,内田千恵子,富樫瑠衣,加藤孝英,神田知宏,倉崎伸一朗,向井亜希,清水祐介,進藤亮,鈴木貴和,諏訪公一,?田優児,田中裕幸,田村香代,中島俊輔,中村章吾,秀桜子,藤本健一,舟山聡,堀真知子,牧山嘉道,三谷和歌子,森居秀彰,森川友和,吉新拓世
- 出版社/メーカー: 日本加除出版
- 発売日: 2017/02/13
- メディア: 単行本
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・Q&A形式でインターネットに関する刑事法上の規制等を整理したものです。
・旧版から情報をアップデートしたほか、コラムを新たに執筆しました。
なお、本年中に脱稿し未公刊のものであり、この段階で公表できるものとして、以下があります。
○「テロリズムの定義と刑事法」法学研究(2018年予定)掲載予定(掲載号未定)
・テロ等準備罪に関する議論の延長線上にあるものとして、また、(米国においてそうであるように)テロリズムは社会のあり方を大きく変容させうるものであり法的な議論を先回りして準備しておく必要があることから、在外研究中に新たに勉強を始めました。
・本当は、テロリズムやコンスピラシーの捜査について整理したかったのですが、(特に前者については)関係する機関が多く、また、制度改正・法改正が多く、大量の情報に溺れかかっています。
・本稿は、この過程で得られた情報を整理し検討を加えた「副産物」です。
・上記の課題は今後も取り組んでいきたいと考えています。
○「いわゆるシャクティ事件最高裁決定と共同正犯の成立範囲」『日髙義博先生古稀記念祝賀論文集』(2018年予定)掲載予定
・シャクティ事件最高裁決定が共同正犯の成立範囲について一定の立場を採ったとする有力な議論について、(従来から関係する論文の注の端っこにちょこちょこ書いてきた)異論を改めて唱えたものです。
・「重箱の隅」的に感じられそうですが、そうでもないということを書いたつもりです。
・極私的には、大学院生以来のテーマなのでこの件については執念深い、ということもあります。
年が明けるといよいよ現場復帰まで3ヶ月になります。こちらでの残り時間を精一杯楽しみたいと思っています。
みなさんよいお年を。